利用率6割!JTが実践する、自然と会話が生まれる「社内ハブ」の空間デザインと未来像【後編】
前編社食が”出社したくなる理由”に。JTの「つながる食堂」が育む、心と身体のウェルビーイング【前編】では、JTの社員食堂「&(アンド)」が持つ、身体だけでなく心の健康を満たすための独自のコンセプトとメニューへのこだわりについて伺いました。後編では、1日400〜500人が利用する空間の工夫、そして社員食堂のこれからの可能性について、引き続き人事部の井出さんに伺います。
昼は主役の食堂、午後は集中フロア、夜は東京タワーを望むパーティー会場に!多機能がもたらす空間の魔法
――「&」は1日にどのくらいの社員が利用しているのでしょうか 。
井出さん: 食堂の営業時間は11時半から13時半なのですが、その時間帯に1日400〜500名ほどが利用しています 。13時までに出社した社員数で換算すると、平均でなんと約60%の喫食率です 。座席数は全部で350席ほどあるのですが、お昼どきはほぼすべての席が埋まっている印象があります 。


――驚異的な利用率ですね!社員の方が、「食堂があるから出社したくなる」ような仕掛けはあるのでしょうか 。
井出さん: 仕掛けとまで言えるかわかりませんが、社内SNSでのメニュー発信に工夫を凝らしています 。ただ「今日のメニューはこれです」と流すだけでなく、使用している食材の裏話や、おすすめメニューの仕込みの様子などを写真付きで臨場感たっぷりに発信するようにしているのです 。 厨房から漂う美味しそうな空気感が画面越しに伝わるような工夫をすることで、社員が「このメニューが食べたいから、明日は出社しよう」と、前向きに行動を起こすきっかけになっているのかもしれません 。また本社FAQサイトには、本社ビルの使い方など、さまざまなコンテンツがあるのですが、中でもアクセス率が高いのが、この社員食堂のページです 。多くの社員が、毎日のメニューや週間のメニューを本当に楽しみにチェックしています 。
――ランチタイム以外でも、この空間は活用されているのでしょうか 。
井出さん: ランチタイム以外は、執務スペースとして開放しています 。弊社はABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング。業務内容に応じて働く場所を選択する働き方)を採用していて、個人の固定席は決まっておらず、その時々の働き方に応じて自分で働く場所を選べるようになっています 。
社員食堂は執務フロアよりも天井が高く静かなので、「気分を変えてアイデアを出したいとき」などにも大人気の場所になっています 。 午前中は一人で集中して作業されている方が多く、午後になるとチームでミーティングをする姿が目立ちますね 。一時貸出用のモニターやポータブルバッテリーも完備しています 。
――食堂の内装もとても素敵です。中央の暖炉や、積まれた薪などは何か意図があるのでしょうか 。
井出さん: 実は、ここは正直に言うと「これにしよう」と強くこだわって設計したわけではなく、ビルにもともとあったデザインを活かしている部分が大きいです(笑) 。とはいえ、結果的にそれがとても居心地のいい空間を生み出してくれています 。同じフロアには、ハンモックのような椅子が置かれた休憩スペースもあって、こもってアイデアを考えたり、ドリンクを片手にくつろいだりしている社員もよく見かけます 。



――食堂の隣には、本格的なカフェもあるのですね 。
井出さん: はい。「hototogisu cafe」というスペースも併設していて、ここでは軽井沢の焙煎所から特別に卸してもらった豆を使った本格コーヒーが提供されます 。とても香りがよく大人気で、ランチを終えた12時過ぎになると、午後の仕事に備えてコーヒーを買う社員で行列ができるのが日常の風景です 。
ほかにも、季節のフルーツを使ったスムージーも好評です 。今だと柑橘系のスカッシュとレモンフローズンヨーグルトを提供しています(取材時) 。フレッシュなスムージーを飲みながら、この開放的な空間で仕事をする時間は、社員にとって大きなリフレッシュになっています 。


――夜にはパーティープランもあると伺いました。アルコールも提供できるのだとか 。
井出さん: そうなんです。夜は事前予約制で、部署の懇親会やプロジェクトの打ち上げ、さらには社外のお客様を招いたパーティーの場としてフル活用することができます 。2ヶ月ごとにテーマが変わるパーティープランがあり、今は「台湾夜市」をテーマにした魅力的な料理が提供されています(取材時) 。
社内の飲み会や懇親会は、幹事になるとお店を外で探して予約するのがたいへんですよね 。でもここならその必要がありませんし、運営会社さんが準備から後片付けまで全てケータリング形式でやってくださいます 。 窓からは東京タワーの綺麗なライトアップも見えますし、四半期に一度開催する転入者向けのウェルカムパーティーなどでも大活躍しています 。仕事モードからガラッと切り替えて、プライベートな話で盛り上がれる、心理的安全性の高い場になっています 。


――お昼のカフェ利用から夜の懇親会までさまざまな顔を持ち、まさに社内の「マルチハブ」として機能しているのですね 。社員食堂をきっかけに、社員同士のコミュニケーションが生まれた具体的なエピソードはありますか?
井出さん: 私が所属する人事部のインターナルコミュニケーションチームで企画した「わたしの旅ごはん」という特別企画が、まさにその良い例です 。これは、社員から「旅先で出会った思い出の料理やおすすめの一品」のエピソードを募集し、それを食堂のシェフが本格的に再現して特別メニューとして展開する取り組みです 。
6月には山形の名物である「冷たい肉そば」を提供しました 。応募してくれた社員の旅の思い出コメントと一緒にメニューを展開するのですが、これを見た他の社員が「あ、これ〇〇さんの旅ごはんだよね」「このメニューが食べたくて今日出社したんだよ」といった会話があちこちで聞かれました 。普段の業務では交わらない部署の垣根を越えたコミュニケーションが広がる、絶好のきっかけになったと思っています 。
また、JTグループ企業の製品を取り入れる取り組みにも積極的です。最近では、テーブルマークと富士食品工業のコラボレーションにより実現した「本場さぬきの丹念仕込みうどん」の提供を開始しました。
グループ企業の製品をより身近に感じてもらい、いつものランチタイムが自分たちの仕事やJTグループの事業を誇らしく感じる時間になる。そんな想いのもと、両社と食堂運営会社が打ち合わせや試食を重ねながら検討・調整を進め、メニュー化が実現しました。
「パーパスとの繋がり」を7割の社員が実感!数字で見るウェルビーイングの効果
――社員食堂が社員のウェルビーイングに寄与していると感じるエピソードや、数値的な変化はありますか 。
井出さん: 食堂のオープン2周年を機にアンケートを実施したのですが、「『&』が、JT Group Purpose『心の豊かさを、もっと。』の実現を支える場である」ということについて、なんと約7割の社員が「認知している・聞いたことがある」と回答してくれました 。 フリーコメントでも「スタッフの方がいつも元気で、気持ちよく利用できる」「スタッフさんとのやり取りに癒される」といった、空間や接客に対する温かい評価がたくさん寄せられました 。また、「高タンパクなメニューが欲しい」という社員の声を受けて、サラダにトッピングできるサラダチキンを定番化するなど、社員の声を取り入れながら一緒に食堂を作っていく空気感もあります 。

目指すは「もう一つのオフィス」。社員食堂から生まれる新たなイノベーション
――JTが考える「理想の社員食堂」とはどのようなものでしょうか 。
井出さん: 長期的には、「&」を訪れたすべての人が何らかの発見を持ち帰れる場にしていきたいと思っています 。組織の垣根を超えた交流を促し、発想や価値観を共有できる食堂であることが理想で、それが将来的に新たな事業やイノベーションのきっかけにつながったら素敵だなと 。食堂が、もう一つのオフィスのような役割を持てればという思いです 。
――最後に、これから「健康経営×社食」に取り組もうとしている他社の人事・管理部へ向けてアドバイスをいただけますか 。
井出さん: なんといっても、単なる福利厚生施設で終わらせないことでしょうか 。食は誰もが必要とするものであり、多様な社員をつなぐ最強の共通項になります 。食をコミュニケーションの資源としてとらえるためには、まず「おいしさを妥協しないこと」 。味はもちろん、温かいものは温かく出すといったクオリティなどにもこだわることで、初めて社員食堂がコミュニケーションの資源として機能してくると思います 。 もちろん福利厚生施設であることは間違いないのですが、「自社が従業員にどんな価値を届けたいのか」「何を大切にしている会社なのか」というパーパスを重ね合わせることで、その会社ならではの食堂運営の形が見えてくるのではないでしょうか 。
――社員食堂という場所が、企業の文化と人を育てる強力な「投資」であるということがお話から深く伝わってきました 。貴重なお話をありがとうございました 。
取材・文/佐藤真紀 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER Inc.)
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