社食が”出社したくなる理由”に。JTの「つながる食堂」が育む、心と身体のウェルビーイング【前編】
近年、多くの企業が「健康経営」に舵を切っています 。しかし、本当に大切なのは数値やグラフを管理するだけでなく、いかにして社員の「心身の健康」や「働くモチベーション」を高めていけるかではないでしょうか 。そのアプローチとして、今熱い視線を集めているのが「社員食堂」の存在です 。本連載では、社食を起点に一歩進んだ健康経営を実践する企業を徹底解剖 。第1回は、日本たばこ産業株式会社(JT)の取り組みに迫ります 。

単なる福利厚生で終わらせない。JTが「食」に込めたGroup Purposeの体現
2020年に現在のビルに本社を移転し、2024年には社員食堂が“つながる食堂「&(アンド)」”として、さらに魅力的にリニューアル 。近年のハイブリッドワークの定着を経て、同社の社員食堂は今、劇的な進化を遂げています 。その「おいしさ」の裏側にある緻密な工夫や、健康経営にかける熱い想いについて、人事部の井出羽香さんにお話を伺いました 。

「義務感の出社」を「楽しみな出社」へ。湯気がもたらす「心の健康」へのアプローチ
――まずはリニューアルされた社員食堂「&(アンド)」のコンセプトを教えてください 。
井出さん: 私たちはこの場所を、単に「お腹を満たすためだけの福利厚生施設」とは捉えていません 。社員はもちろん、取引先や社外の関係者の方々など、多様な人が「食」を共通項にして集う「つながる食堂」として設計されています 。この社員食堂で生まれるリアルなコミュニケーションを通して、人と人、人とコトが繋がり、そこから新しいアイデアやイノベーションの種が生まれるような場を目指しています 。
JTグループには「心の豊かさを、もっと。」というJT Group Purposeがあるのですが、「&」はまさに、そのパーパスを最も直感的に体感できる場所として位置づけています 。
――「心の豊かさ」を体感する場として、そして昨今注目されている「健康経営」の文脈において、この食堂はどのような役割を担っているのでしょうか?
井出さん: 健康経営の一環としての社員食堂というと、塩分控えめや低カロリーといった「身体的な栄養バランス」に目が向きがちですよね 。もちろんそれも大切な要素ですが、リニューアル前の食堂と比べて「&」が大きくアップデートしたのは、心のゆとりや人との関係性まで含めた「総合的なウェルビーイング」を重視している点です 。
例えば、日々の生活が忙しく、家に帰っても夕飯の準備に追われるような毎日の中で、平日のランチタイムが単なる栄養補給ではなく、誰かが丁寧に手間暇をかけて作ってくれた料理を、湯気が立つ出来立ての状態で食べられる時間になったら、それだけで心がホッと豊かになるのではないでしょうか 。



また、ただ食べるだけでなく、食事をきっかけに「これ美味しいね」「今日の魚は何だろう?」と会話が弾んで気持ちが切り替わったり、産地情報を見て新しい発見があったり 。そうした「おいしい」の先にある、ホッとするような心の健康にアプローチするのが、この食堂の一番の役割です 。 毎日の義務として出社するのではなく、「今日は『&』であのメニューが食べられるから出社しよう」「あそこに行けば心地よい時間が過ごせる」と、社員が前向きに行動したくなるような場所へと進化させています 。
心身の豊かさを胃袋に届ける、徹底された「5つの視点」
――メニューを拝見すると、肉系、魚系の定食から丼もの、麺類まで毎日約7種類もあって驚きました 。メニュー開発や日々の調理において、大切にされているこだわりはありますか?
井出さん: メニュー開発や運営にあたっては、運営会社さんと密に連携しながら、食を通じて心と身体の豊かさを届けるための「5つの視点」を大切にしています 。
1.素材を活かす「さしすせそ」 砂糖や塩、醤油、味噌といった日本の基本調味料は、伝統的でシンプルな製法のものを選び、素材本来の味を活かすことを大切にしています 。
2.身体がよろこぶ「旬の野菜」 有機栽培を基本に、季節や地域性を感じられる新鮮な野菜を厳選してメニューに取り入れてもらっています 。
3.手間がつくる「本物の味」 社食といえば大量調理というイメージがあるかもしれませんが、手ごねのハンバーグや手作りのドレッシング、出来立ての料理の提供など、ひとつひとつの工程に手間を惜しまないようにしています 。これが社員からは「家庭料理のような安心感や温かみが感じられる」と好評です。
4.つくり手と食べ手を「つなぐ」 全国各地の小さな生産者さんを応援する意図も含め、直接やり取りをして食材を仕入れています。
5.食べるの「見える化」 食材の産地や生産者、栄養価などの情報をポップや社内発信でわかりやすく伝えることで、安心と信頼もおいしさの一部として届けています 。


――この5つの視点は、実際のメニューにどのように反映されているのでしょうか 。
井出さん: 毎日提供される魚の定食が、特にわかりやすい例だと思います 。実は、その日に何が出るかは当日まで分からないのですが、その理由は、毎朝目利きの魚屋さんが市場で選んだ旬の魚をその日に仕入れ、厨房で丁寧に下処理をして提供しているからなのです 。鮮度が全然違うので、さんまや牡蠣といった旬の魚が並ぶ日は特に反響が大きいですね 。
お米にも強いこだわりがあって、五つ星のお米マイスターが季節に合わせて銘柄を選定しているため、時期によってお米の種類が変わる仕様になっています 。
また、たばこ農家さんが作るお米を仕入れるという、JTグループならではのユニークで面白い取り組みもあります 。実は、たばこ農家さんは兼業でお米も作られている方が多くいらっしゃるのです 。その農家さんが作ったお米を秋に仕入れて食堂で提供することがあります 。「〇〇さんちのお米」と看板を出して紹介するのですが、これが本当に好評です 。(2026年7月取材時)
私自身、人事部にいると、普段の業務の中でたばこの原材料や農家さんに直接接する機会はあまりありません 。でも、食堂でそのお米をいただくことで、「自分たちの会社はこういう方々に支えられているんだ」「日本全国の地域とつながっているんだ」と肌で実感できる 。これが、会社への帰属意識や、働くモチベーションの向上に自然と寄与しているなと感じています 。
――実際に社員食堂を利用されている社員の皆さんの反応はいかがですか?
井出さん: 以前の食堂を知る社員からは、「昔は『仕方なくこれで済ませよう』と選んでいたけれど、今は『どれにするか迷っちゃう!』という前向きな声が増えた」という話をよく聞きます 。 平日のランチが単なる栄養補給ではなく、「誰かが丁寧につくってくれたものをいただく」という贅沢な時間に変わることで、働く社員のモチベーションにつながったり、心の豊かさが生まれたりしていると実感しています 。




(後編に続く) 後編では、1日500人という利用率を誇る空間づくりの秘密に迫ります!
取材・文/佐藤真紀 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER Inc.)
カテゴリー
サービスメニュー
-
ヘルスケア
コンテンツHealth Care -
メンタル
ヘルスケア
コンテンツMental Health Care -
家事サポート
オフタイム
コンテンツHousework Support Off Time -
目標設定
コンサルティングGoal Setting Consulting -
研修
Training -
カンファレンス
セミナーConference/Seminar -
健康宣言報告書
Health Declaration Report