企業も自治体も“健康経営”。ユニークな食の施策で健康リテラシーが劇的にUP!

    メンタルヘルスケア
投稿日:2024年12月13日 08:10

日本人のヘルスリテラシーをより高めるために、自治体や企業が率先して健康意識を高める、「健康経営」に尽力するケースが増えてきています。「健康寿命」という概念の生みの親でもある、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野名誉教授の辻󠄀一郎先生に、自治体や企業の具体的な取り組みについてお話を伺いました。

始まりは健康寿命の低さ!「足立ベジライフ」プロジェクト

健康寿命を延ばすための取り組みが、さまざまな自治体や企業で行われるようになりました。例えば、その代表的なものとして「足立ベジタベライフ」プロジェクトがあります。2013年から10年以上続いており、かなりの成果をあげている事例です。

このプロジェクトのそもそもの始まりは、「足立区民の健康寿命が東京都の平均より2歳短い」というショッキングなデータが発表されたことでした。これをなんとかしなくてはと、「糖尿病対策」1本に絞って食習慣を変えよう、野菜の摂取量を増やそう、と始まったのが本プロジェクトです。

野菜を食べるために、飲食店や学校給食がバックアップ

足立区内の飲食店に協力を募り、現在では850店以上が参加。協力店では、野菜の増量をしてもらい、定食系は野菜の小鉢を先に出すなどのベジファーストを推進しました。

また、民間企業と連携して健康食関係のイベントを開催。スーパーや弁当店では野菜たっぷり弁当を販売したり、学校給食でも野菜を増やしたり。幼保・小・中学校では合言葉として「ひと口目は野菜から」を徹底しました。

その結果、足立区民の野菜の摂取量はぐんと増えたのです。まずは、給食の影響で子どもたちの摂取量が増加しましたが、と同時にその親世代でもある30 歳代の摂取量も目に見えて変化しました。

「これくらいが1日の野菜摂取量の目安なんだよ」「最初に野菜を食べるといいよ」など、子どもが学校で知ったことを持ち帰って話すことで、家庭で食卓に出す野菜量も増えたわけですね。

健康寿命が改善!世界が注目するプロジェクトに

このようなことをコツコツと徹底して行ったことで、実際に足立区の健康寿命は徐々に上がっており、糖尿病医療費も23区ワーストから7番目(2021年)になるという良い結果が出ています。

また、2018年OECD (経済協力開発機構)が日本の公衆衛生に関する調査団を派遣した際、健康づくりに力を入れている自治体の視察先として選ばれたのが足立区でした。同機構は、この「足立ベジタベライフ」プロジェクトを絶賛!世界にも認められたのです。

社員の健康づくりを担う社員食堂。LINEヤフーがお手本に

企業が社員の健康改善の一端を担うこともあります。例えば、健康的な食事をするために手っ取り早いのは、「社員食堂」の変革です。

社員食堂の取り組みでかなり成果が出ているのは、LINEヤフー。LINEヤフーの本社は東京の千代田区紀尾井町にあるのですが、その周辺でランチを食べようとするとかなり高額に。それに比べて社員食堂は割安なので、従業員の大多数が社員食堂を利用します。ランチで約 3000 食出るそうですから、まさに社員食堂のアップデートが、社員の健康維持に大きな影響を与えるわけです。

揚げ物税100円の導入で、ランチの売上比率が激変

例えば、ここの社員食堂では、朝食におにぎり、バナナ、ヨーグルトを無償提供しています。これだけでも朝を欠食する人がかなり減ったそうです。

また、ランチの「アンダー 655セット」 は、トータルカロリーを655以下に抑えつつ、栄養バランスがととのった日替わり定食で500円以下。しかも、会社からは100円の補助があります。

さらにユニークなのは、2019年に「揚げ物税」と称して肉類の揚げ物を100円値上げ、代わりに魚料理を150円値下げしたこと。この価格操作の影響は予想以上に大きく、揚げ物税を導入する前と後では販売数に大きな影響があったそうです。揚げ物が1日 約500 食だったのが200食以下に減ったのに対し、魚料理は150 食から400食以上に増えたのだとか。

LINEヤフーでは、社員食堂の仕かけによって社員の健康がどのように変わっていったかをデータ化して、今後につなげる取り組みもしているそうです。

個人の努力ではなく、環境から意識を変えていくべき

私たち一人ひとりが意識を変え、健康になるために頑張ろうと決意しても、継続するのは難しいもの。一方で、努力できる人とできない人がいて、格差が生まれてしまうのも事実です。個人の努力ではなく、自然に健康になれる環境づくりをすることが大事なのだと思います。

厚生労働省が発信する指針「健康日本21(第三次)」の「スマート・ライフ・プロジェクト」でも、自治体や企業と連携していますが、みんなが健康になり、なおかつ定着させるためには、地域社会や企業ベースで環境を変えていくこと。今、その必要性が高まっているのです。

プロフィール

プロフィール写真:辻󠄀 一郎

辻󠄀 一郎(つじ・いちろう)

東北大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学分野 名誉教授。1957年北海道生まれ。東北大学医学部卒業。健康寿命の延伸に向けた研究のほか、東日本大震災では発生50日後に地域保健支援センターを立ち上げ、被災者支援と健康調査に尽力。厚生労働省「健康日本21」の委員長も務める。

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