1日1万歩では多すぎる⁉1日300歩でOKの「ボール・ウォーキング」

    オフタイム
投稿日:2024年12月13日 08:20

手軽にできる運動の代表格がウォーキング。通勤の際には最寄り駅の1駅前で降りて歩いたり、エスカレーターを使わず階段を上り下りしたり。最近ではアプリなどを使い、ゲーム感覚でウォーキングを楽しんでいる人も少なくありません。

厚生労働省が発表した「運動ガイド2023」によれば、健康維持には1日8000歩、もしくは1万歩を目標とするのが良いとされていますが、「皆さん、歩数や時間に注意が向きがちで、肝心かなめの『正しい歩き方』ができていない人がほとんどではないでしょうか?」と言うのは、「健康は足から」をモットーに、延べ13万人の足や体を診てきたフットマスター・新保泰秀氏。

「例えば、ゴルフやサッカーや野球などで、間違ったフォームで毎日練習していても、うまくならないどころか、体を壊してしまいますよね?同様に、間違った歩き方では健康にはなれません」と警鐘を鳴らします。

正しく歩けば体にあるさまざまな関節の可動域が広がり、筋肉も躍動し、酸素をより多く取り込むことができます。そのため、1日300歩、時間にしてわずか5分程度のウォーキングを続けただけで、体の不調になんらかの改善が見られるのだとか。

では、「正しい歩き方」とは? 氏の著書『靴底の外側が減らなくなると体の不調も消える』よりご紹介しましょう。

「親指で蹴って歩け」の不思議

「親指で蹴って歩く」のイメージ

まず知っていただきたいのが、間違った歩き方についてです。その代表例が「親指で蹴って歩く」。ウォーキング教室でそのように指導されることが多いようですが、その最大の欠点は力んで関節がかたまってしまい、体を痛めることにつながることです。

例えばゴルフのクラブを握るときは、主に中指、薬指、小指の3本を使い、できるだけ親指に力を入れないようにしますね。居合では日本刀を薬指と小指の2本で持つそうです。なぜかというと、親指を使った瞬間に手首がかたくなり、全身も力んで硬直してしまうからです。

これは足もまったく同じです。足の親指に力を入れると足首がかたくなり、関節の可動域が制限されてしまうのです。よく「足の指で地面をつかむようにして歩きなさい」と言われて、親指で一生懸命地面をつかもうとする人がいますが、実は地面をつかむコツは足首にあります。

試しに足首を上に曲げてみてください。大きく曲げるほど、5本の指は自然に開きますよね。今度は逆に、足首を下に曲げてみてください。指は自然に閉じますし、この状態で指を開くのはけっこう大変です。足首が正しく機能していれば、無理につかもうとしなくても、足の構造上自然と地面をつかめるのです。

歩くときに、後ろ足の中指と薬指で前に押し出すようにすれば、足首の可動域がマックスになるので、5本の指をすべて使うことができます。ところが多くの人は親指で地面を蹴ったりつかもうとするので、本来足が持っている能力の半分も使うことができないのです。

力まず、ラクに歩くには「バランス・ポイント」を意識して

私がおすすめしたいのは、やわらかく、スムーズで、余計な力を必要とせず、最初の一歩を踏み出したらあとはボールがコロコロ転がるように自然に進む歩き方。名づけて「ボール・ウォーキング」です。

けっして力まないこと。これが正しい歩き方の大前提です。筋肉に余計な力みがあるとすぐ疲れますし、体にゆがみが生じます。

リラックスして歩き出すには、一番バランスよく、力まない足裏の位置に体重をかけて立つ必要があります。その位置を「バランス・ポイント」といい、かかとの少し前で、内くるぶしと外くるぶしを結んだ真ん中です。

バランスのポイント

このバランスポイントに体重がストンと乗るように立つと、無駄な筋力を使わなくても不思議なほどラクに立ち続けることができます。もちろん、ラクに歩けるようにもなります。

また、バランスポイントを意識して重心を変えるだけで、一瞬にして体に一本、芯が通ったように安定し、呼吸や関節の可動域も広がるなど、“人間の機能”が一気に高まるのです。

正しい歩き方のために意識すべき7つのポイント

そのうえで、注意したい「ボール・ウォーキング」のポイントは以下の7つ。

①ひざを伸ばしてかかとで着地

踏み出した前足を着地するときは、必ずひざを伸ばすこと。そうすることでひざに適度にロックがかかり、足首が左右にぶれにくく、安定するのです。また、ひざが曲がっていると重心が前方に移動しないので、頑張っているわりになかなか前に進みません。その点、ひざを伸ばすと、ラクに歩いても自然と早く歩けます。

②足裏の体重移動は「かかと→小指→薬指」の順で

かかとの少し前で着地したら、かかとから小指、小指から薬指へと体重をかけていきましょう。こうすることで、かかとから小指にかけてのアーチで衝撃を緩和でき、足指でしっかり地面をつかむことができます。その結果、次の一歩を踏み出すための推進力を生むことができるのです。薬指が地面から離れるときは、決して薬指で蹴らないよう注意して。

③足首をしっかり伸ばす

最も重要なポイントは、着地したあと、後ろ脚のかかとを上げて、足首をしっかり伸ばすこと。こうすることでふくらはぎが弛緩・収縮し、全身の血流が良くなります。また、後ろ脚の足首を使うと推進力が生まれます。この推進力を利用すれば、一生懸命脚を前に出そうとしなくても、前脚にスムーズに重心が移動するのです。さらに、ふくらはぎの力を入れずに行うと良いです。

④後ろ脚のつけ根を伸ばす

「ボール・ウォーキング」では脚を前に出すことを意識するのではなく、後ろ脚を伸ばすことを意識します。いつもより少しだけ後ろ脚を地面に残すような感覚で歩くと、脚のつけ根、つまり鼠径部が気持ちよく伸びて、重心が自然と体の中央に来ます。それにより腰のねじれが防げますし、上半身のバランスを取りやすくなるので、力まずに次の一歩を踏み出せます。

⑤足先を進行方向に向ける

足先が進行方向に向いていると、足首が内側や外側に過度に倒れることなく、バランスの良いポジションをキープできるので、ボールが坂を転がるようにスムーズに歩けます。また、体も左右に揺れなくなり、早く目的地に到着します。

⑥腕は振らずに肩甲骨を引く

学校で教わる歩き方は、「右足を出したら左手を前に振る」でしたよね。でも、それは間違いです。正解は「右足を出したら、同時に右肩を引く」です。こうすると体が少しねじれて体の中心に軸ができ、上半身が安定するのです。逆に左肩を出すと体が前のめりになり、猫背気味になってバランスも悪くなってしまいます。わざわざ手を振って歩く必要はありません。両腕の力が程よく抜けていて、歩くとでんでん太鼓のように両腕が自然と前後に出るのが理想です。

⑦肋骨を上げて肩を下げる

上半身のポイントとなるのが、胸全体を張ること。具体的な方法としては、まず軽く息を吸って、肋骨を引き上げます。そのままでは肩も上がって力んでしまいますので、肋骨を引き上げたまま息を吐いて、肩を脱力させます。こうすると体の前面は軽く胸を張った状態に、背面はすっと背筋が伸びた状態に。これが歩くときの正しい姿勢です。

以上、「ボール・ウォーキング」についてご紹介しました。正しい歩き方は、さっそうとして見た目が美しいだけではなく、より健康な体を手に入れられるメリットも。ぜひ今日から始めてみてください。

▶「新保式ボール・ウォーキング」の詳しい内容はこちら!

著者プロフィール

プロフィール写真:新保泰秀

新保泰秀(しんぽ・やすひで)

新保整骨院、南青山『足から治療院』Creare(クレアーレ)院長。柔道整復師、フットマスター代表。1967年生まれ。1989年、東海大学工学部卒業。大手食品会社勤務を経て、2002年、日本柔道整復専門学校卒業。2004年、埼玉県越谷市に新保整骨院を開業。2014年に南青山『足から治療院』Creareをオープン。「健康は足から」をコンセプトに、足首のゆがみを矯正、足から全身を診るプロフェッショナル。骨盤矯正、背骨矯正、頚椎矯正、頭蓋骨小顔矯正など全身を調整し、外反母趾、ひざ痛、腰痛、肩こり、首の痛み、頭痛の緩和、ダイエット効果なども得られる。

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