お話を伺った方

医師・須田万勢さん((すだ・ませい))
諏訪中央病院 リウマチ膠原病内科 医長。2009年に東京大学医学部卒業、諏訪中央病院での研修や聖路加国際病院リウマチ膠原病センターでの勤務を経て、2019年より現職。2018年には一般社団法人・統合医療チームJINを設立。数少ないハイドロリリース(注射を使った筋膜リリース) の専門家でもある。Youtube「養生ソムリエ Dr. マシューのほろ酔い養生」では手軽にできるセルフケア法などを豊富に発信中。
「お酒=とにかく体に悪い」というイメージをお持ちの人も多いのではないでしょうか。しかし、お酒には正しい飲み方をすれば心身にポジティブな効果をもたらすことがわかっています。健康と上手に向き合いながらお酒を楽しむ「スマート飲み」という新しい飲み方も注目をあつめています。お酒を飲みながら養生法を解説するYouTube動画が人気の医師・須田万勢さんに教えてもらいます。
飲み方しだいで適度な飲酒は、ストレスの軽減や血行促進などいくつかの健康メリットが期待できます。あなたの知らないお酒の意外な健康効果があるかもしれません。
適量の飲酒は、血管を拡張させて血液の流れをよくします。血行を促進するので、体が温かくなったり、疲労回復の効果も期待できます。動脈硬化の予防もあるといわれています。
適量のアルコールには副交感神経を優位にし、心を落ち着かせる作用があります。また、お酒の香りにもリラックス効果があります。とくにワインやウイスキーなどの香りやビールの原料・ホップの香りには気分を落ち着かせるなどのアロマ効果があるともいわれます。ストレス解消のためには、自分のペースでゆっくりとお酒を楽しみましょう。心理的なストレス軽減にもつながります。
少量のお酒を食前に飲むと、胃液の分泌を促し、食欲を増進させる効果があります。ただし、空腹の状態でたくさんのお酒を飲むのは避けましょう。胃腸を強く刺激し、粘膜を荒らしてしまうからです。
社交の場での飲酒はコミュニケーションを円滑にし、社会的なつながりを深める一助となります。
アルコールの適量として、言われているのは20gです。種類別にみてみると下記のようになります。
ビール500ml(中瓶1本)
缶チューハイ500ml(ロング缶1本)
ワイン180ml(グラス1~2杯)
日本酒180ml(1合)
焼酎 110ml(1.5杯)
ウィスキー 60ml(ダブル1杯)
*参考:アルコール健康医学協会
一般的に女性は男性よりも、お酒に弱いとされます。また、アルコールの代謝能力には個人差がありますし、体格の差や年齢の差、飲酒をするときの体調によっても酔い具合が違ってきます。ほどよくお酒を楽しむためにも、適量は意識しましょう。
「スマート飲み」とは、健康を意識しながらお酒を楽しむ新しい飲み方のことです。単に量を減らすだけでなく、お酒を飲むタイミングや種類、飲み方を工夫することで、飲酒がもたらす健康リスクを最小限に抑えつつ、ポジティブな効果を引き出すことを目指しましょう。
「飲みすぎない」を基本に、適量目安を意識しましょう。これにより、肝臓や心臓への負担を軽減し、健康リスクを減らすことができます。
急激に血中アルコール濃度を上げないことが大切です。そのためには、水をこまめに飲むことも意識しましょう。私は「お酒を1杯飲んだら、水を1杯飲む」ことを推奨しています。
また、食事と一緒に楽しむなどして、酔いをコントロールし、体に優しく飲む方法を心がけましょう。空腹時に飲むとアルコールが急激に吸収され、酔いやすくなるため、食事と一緒に楽しむようにしましょう。食物と一緒に摂取することで、血糖値の上昇を抑え、アルコールの影響を緩和することができます。とくにタンパク質や脂質を含んだ食物を食べると、アルコールと胃の粘膜の接触を緩和し、アルコールの吸収のペースがゆるやかになります。
寝る前の飲酒「寝酒」をすると、就寝中に心拍数が上がったままになったり、アルコールが分解されてできるアルデヒドという物質が睡眠を妨げます。アルコールの影響が抜けるまでには数時間かかるので、早めに飲み始めて、早めに飲み終えるのが翌日に疲れを残さない「スマート」な飲み方です。
お酒はうまく付き合うことが何よりも大切。適量のお酒を適正に飲んでいる人は、死亡率が下がるというデータもあります。自分のペースを大切にした“スマート飲み”などを心がけ、お酒を楽しんでいきましょうね。
諏訪中央病院 リウマチ膠原病内科 医長。2009年に東京大学医学部卒業、諏訪中央病院での研修や聖路加国際病院リウマチ膠原病センターでの勤務を経て、2019年より現職。2018年には一般社団法人・統合医療チームJINを設立。数少ないハイドロリリース(注射を使った筋膜リリース) の専門家でもある。Youtube「養生ソムリエ Dr. マシューのほろ酔い養生」では手軽にできるセルフケア法などを豊富に発信中。
近年、若者や海外での人気が再燃している日本酒。日本酒をはじめとする日本の「伝統的酒造り」が24年ユネスコの無形文化遺産に登録されたことも話題になり、新しい楽しみ方や魅力が見直されています。おしゃれなラベルデザインや、飲みやすい味わいなど、これまで日本酒に親しみがなかった層に新たな魅力を伝えています。
そんな中、実際に日本酒を作る酒蔵の現場では、どんな変化を感じているのでしょうか。山口県阿武町にある創業125年の酒蔵の代表 三好さんに聞きました。
――日本酒が多方面から人気になっていると思います。人気が再燃した理由はどこにあると思いますか?
日本酒が注目されているのは、私も色々な場面で実感しています。なかでも、少しリッチな価格帯の銘柄が人気で、よく売れています。
理由のひとつとして、コロナ禍きっかけの自宅で過ごす「おうち時間」が増えたことが挙げられると思います。おうち時間を楽しむエッセンスとして、お酒・日本酒が選ばれる機会が増えたのではないでしょうか。
また、現在は週末など休日に”いいお酒”をゆったりと楽しむ方も増えているように感じます。がんばる自分や仲間へのご褒美として、高価格帯の日本酒などを購入いただいているみたいです。
――近年は若者や海外での人気が再燃しているように感じます。
そうですね。最近はイベントなどを通じて、20代のとくに女性で日本酒を好んでくださる方が増えた印象です。
近年、アルコール度数を下げた日本酒やフルーティな香りの飲みやすい日本酒が登場し、従来のイメージが変化しているのかもしれません。うちの酒蔵でもアルコール度数を下げた商品を造っていて、人気があります。
アルコール度数の低い日本酒は、料理とのペアリングもしやすく、食事と楽しむのにぴったりです。和食だけでなく、さまざまなジャンルの料理と日本酒を一緒に楽しんでほしいですね。
――海外の方からの人気を実感することもありますか?
日本らしさがわかりやすいパッケージが好まれているようです。わたしの造っている「三好」も手に取ってもらえる、かっこよくて目立つラベルを意識したデザインになっています。
日本文化に興味をもつ、日本の若者も増えているように感じています。若い人たちが日本の魅力を再発見して、さまざまな形で発信してくれていて、そのなかには日本伝統の醸造酒である日本酒も。多くの方から興味をもっていただけるのは、とてもうれしいことで、励みになっています。
――造り手として、三好さんが日本酒を飲むときに意識していることはありますか?
日本酒はビールなどと比べるとアルコール度数が高いので酔いやすいというイメージがあるかもしれませんね。日本酒に限らずではありますが、アルコールを飲むときは”食事と一緒に楽しむこと”を意識しています。また、お酒と同量の水を飲むようにすると、次の日にお酒が残ることは少ないですね。と言っても、私は日本酒を飲むとどうしても、仕事の脳になってしまうので酔うことはほとんどないんですが…(笑)。
食事とのペアリングで言うと、うちの「阿武の鶴 三好 White 純米吟醸 おりがらみ」というお酒はラッシーをイメージしていて、スパイスが効いた料理とのペアリングもおすすめです。個人的にはタイ料理が好きなのですが、日本酒と意外と合うんですよ!
――タイ料理と日本酒、意外な組み合わせですね。試してみたいです!
日本酒には、まだまだ色々な魅力があります。「おいしい!」と思ってもらえる日本酒を造っていくことはもちろん、意外なコラボだったり、イベントも考えています。さまざまなシーンで、さらに多くの方に日本酒を楽しんでもらえたらうれしいです。
「阿武の鶴酒造」代表 1897(明治30)年創業。先々代の祖父の代を最後に34年間休造していた酒蔵を、6代目 三好隆太郎氏が、2017年に復活させた。創業以来の銘柄「阿武の鶴」と並んで、新ブランド「三好」も好調。