満足な休みもなく、睡眠時間も削られ、ただただ仕事に追われ続けてメンタルを病んでしまう人は後を絶ちません。忙しさから会社を辞める選択をする人もいるでしょう。
その一方で、せっかく休みがとれても、「スケジュールを埋めないと安心できない」「暇な時間があると、自分は人から必要とされていないと感じて不安になり、あれこれ余計なことを考えてしまう」という人も少なくありません。本来心を休ませたり、豊かにするはずの余暇時間が、ネガティブに作用してしまうケースもあるようです。
「日本人は元々、余暇の過ごし方が下手だと言われていますが、そもそも自己肯定感が低い人は、『暇』な時間を『自分いじめ』に使いがち。ちょっと空いた時間にふと、過去の失敗や恥ずかしかったことが蘇って来て、『なんで自分の人生はうまくいかないんだろう?』『自分には能力(魅力)がないからだ』などと思い始めるのです」
と語るのは、心理カウンセラーの根本裕幸氏。そんなふうに考えたり悩んだりするのは、メンタルに負担をかける「悪い暇つぶし』だとも言います。
では、「良い暇つぶし」とは?根本氏の著書『忙しすぎて辞める人。暇すぎて病める人。』より、そのヒントをご紹介します。
あなたは暇な時間をどう過ごしてる?
突然ですが、次のようなシチュエーションが訪れたとき、あなたは何をすると思いますか?
●友達が約束をドタキャン。1日ぽっかりと時間が空いたとき
●会議がスムーズに進み、次の予定まで3時間以上、時間が空いたとき
●知人との会食の時間を勘違いして1時間早く待ち合わせ場所に着いたとき
多くの人は「暇つぶし」を考えるのではないかと思います。とはいえ、友達との遊びや、会議、会食のつもりだった時間なので、気分の切り替えも難しく、すぐに有意義なアイデアは浮かばないかもしれません。
逆に、あらかじめわかっている「暇」な時間を有意義に使えるかといえばどうでしょうか?
●仕事終わりに家で過ごす暇な時間に退屈を感じる
●特にやりたいことも予定もない暇な週末に退屈さを感じる
こうした状況もたまにならいいのですが、もし、ちょくちょく退屈を感じているのなら、「暇つぶし」の方法をもう少し真剣に考えてみたほうがよいかもしれません。
その準備としてまず必要なのは、普段から自分の心としっかり対話をすること。これまで「与えられた仕事」をこなし、「やりたいことよりもやるべきこと」を優先するなど、他人軸=受動的な生き方をしてきた人は、暇な時間を与えられたとしても、どうやってその時間を活かしていいのかがわからなくなりがちです。
自分の心と対話する第一歩として、常日頃から「自分は今、何をしたい?何が欲しい?」と問いかけてみましょう。
例えばランチのとき、「今、何が食べたい?」と自分と対話してメニューを決めます。惰性に流されて「いつものA定食」にするのではなく、それが食べたいと意志確認して「いつものA定食」をオーダーするのです。
ひと手間かかりますが、自分軸を確立するために意識してみてください。自分の心に何をしたいか問いかけることは、自分をご機嫌にすることにおいても重要です。
あるいは、家に帰るとき、自分にこう問いかけてください。「さあ、これからどう帰るのが自分は嬉しい?」。当たり前に駅に向かい、電車に乗って帰宅するのではなく、「この時間をどう楽しむか?」というゲームにしてみるのです。
もちろん、「早く帰ってお風呂に入ってゴロンと横になる」のが嬉しいことならば、それを実践してもよし「何をするか?」よりも、自分自身に問いかけて心の声を聞くことが大事なのです。 こうして自分をご機嫌にする習慣をつけていくと、自己肯定感も自然と上がり、気分よく過ごせる時間がどんどん増えていきます。そして、ぽっかりと空いた暇な時間も「さて、この1時間をどう楽しもうか?」という発想が自然と出てくるでしょう。これは、暇な時間を自分いじめといった「悪い暇つぶし」に投資しないための防御策のひとつです。
夢や目標があれば「やりたい」が生まれる
自分の心との対話ができるようになったら、次のステップは「やりたいことや好きなこと」を見つけること。やりたいことや好きなことがあると、私たちは自然と「夢」や「目標」を考え、未来を見ることができます。ぽっかりと空いた時間を、その実現のために使おうという行動にもつながります。
例えば、将来は独立して起業したいという夢があるとします。そのためにふだんから経営や起業について勉強しているとすれば、空いた時間が仮に30分だとしても、本屋さんに入ってビジネス書の新刊をチェックしようというアイデアが出てくるでしょう。
あるいは、結婚を考えている恋人がいて関係を前進させたいのならば、次回のデートのプランを練ったり、ファッションやメイクのチェックをすることに時間を割こうと思うかもしれません。
その他にも、新しく推しができたという状況なども同様です。次のライブに参戦するのが楽しみなら、予定のない休日は丸一日推し活に励むことでしょう。退屈している「暇」などなく、新曲をチェックしたり、最近の動向をSNSで調べたり、同担と情報交換したりしているうちにあっという間に1日が過ぎていき、充実した時間を過ごせます。
決して壮大な目標や夢である必要はないのです。「あの服を買いたい」「あの店に行ってみたい」といった身近な願望でOK。何らかの目標や夢を持つと、それだけでワクワクやドキドキ、楽しみ、喜びなどのポジティブな感情が自然とわいてくるようになるはずです。
では今、あなたが思い当たる範囲でパッと思い付いた目標や夢を書き出してみてください。「やりたいこと」「欲しいこと」「やってみたいこと」をひとつだけでなく、思いつくものをすべて書き出してみましょう。
【仕事の目標や夢】
【パートナーシップの目標や夢】
【家族関係での目標や夢】
【趣味の目標や夢】
【健康に関する目標や夢】
【お金に関する目標や夢】
【その他の目標や夢】
あるジャンルではたくさん思い浮かぶのに、別のジャンルではさっぱり出てこない、ということに気付かれるかと思います。しかし、さっぱり思い浮かばない分野をあれこれ考えるのはエネルギーの無駄。スルーしても構いません。
ただ、自分としては興味があるにもかかわらずあまり目標や夢が出てこないということは、改めて自分がしたいことや欲しいものをあれこれ探ってみてもいいかもしれません。
ただし、ストレスや疲れが溜まっているときは、「暇」な時間があっても気力がわかず何もできないのが当たり前です。心は休むことを求めているのですから。特に、忙しい方や、考え癖のある方は気づかないうちにストレスや疲れを溜めやすいもの。しかも、ふだんから自分の心に気を配る習慣がないので自分を責めやすくなります。 「せっかく暇な時間があったのに何もできなかったな」と自分を責め始めたら「それくらい疲れているのかも」と自分を受け入れてあげることをおすすめします。
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著者プロフィール
根本 裕幸(ねもと ひろゆき)
1972年生まれ。静岡県浜松市出身。1997年より神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事。2000年、プロカウンセラーとしてデビュー。以来、延べ15000本以上のカウンセリングをこなす。2001年、カウンセリングサービス設立に寄与。以来、14年間企画・運営に従事し、2003年から年間100本以上の講座やセミナーをこなす。2015年3月退職し、独立。フリーのカウンセラー/講師/作家として活動を始める。得意ジャンルは、離婚、浮気、セックスレス等の夫婦問題をはじめ、結婚・恋愛などの男女関係から、職場の人間関係やライフワーク等のビジネス心理、家族の問題、病気や性格に関する問題などを幅広く扱う。著書『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』(あさ出版)、『「もう傷つきたくない」あなたが執着を手放して「幸せ」になる本』(学研プラス)、『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』(大和書房)ほかベストセラー多数。